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DAYDREAM

白日夢を徒然なるままに

夕凪の街 桜の国

映画

Yunagi_sakuraさて、お盆に見た映画、その2です。またもや邦画「夕凪の街 桜の国」です。

この映画は広島に原爆投下後から現代に至るまで連綿と繋がるある家族の「生命の連鎖」のなかでの原爆の悲劇を紡いだお話しです。ストーリーの中ではその悲劇が原爆を原因とする物なのか曖昧にしていますが、戦後60年経った今でも確実にこの家族を蝕んでいる恐ろしい兵器です。

この映画は2パート構成になっていて、原爆投下から13年経った平野皆実の死を描いたのが「夕凪の街」パートで、皆実の姪にあたる七波の父親尾行を描いた現代のパートが「桜の国」パートという風になっています。2つのパートは時は離れていても密接に関連していて、この映画のテーマを「罪もない被爆者の人生をメチャクチャにした原爆が憎い。核兵器、戦争反対!」なんていう単純なものだけにはしていないのがタネになってます。

それにしても前半に当たる「夕凪の街」パートのドラマはすばらしいです。麻生久美子が皆実の役なのですが、自分はどうしても彼女は時効警察のイメージが強くて、シリアスな演技してても「いつかましてくれるのか?」などと不遜な期待をしていたのですが、この映画を見ているうちにすっかり彼女の迫真の演技に目頭を熱くしていました。

夕凪の街パートはストレートではないですが原爆の悲劇が表現されていて、それは肉体的な物だけではなく精神的な差別とかも含まれる物であり、全くそのあたりの事情を知らなかった私にはショッキングな物でした。

続く「桜の国」パートは皆実の弟である旭が広島に出かけたところをその娘七波が友人とともに尾行する話で、一見現代劇の軽い話のようですが「夕凪の街」パートとあわせて考えると世代を超えた原子爆弾の悲劇がそこに紡がれていることに気がつくはずです。

すべては父親が七海に最後に言った言葉に凝縮されていますね。

「おまえは幸せにならないとな」

原爆の不幸を背負ってきた平野家と父と母からその思いを七波が継承することがこの映画の最大のテーマです。あの皆実から七波に受け継がれる髪止めは何の隠喩なのでしょう?七波がそれを引き継いでくれないと彼らの戦争は終わらないのだと思います。それがないと単なる戦争を題材にしたありがちなお涙ちょうだい映画になってしまう。

でも、その「夕凪の街」パートと「桜の国」の融合がイマイチなのも確か。特に夕凪の街のパートに七波が出てくる演出は、この佐々部監督の「四日間の奇跡」でもやってた意味不明の演出を思い出させてくれました。あれじゃ、七波がタイムスリップして父と母の過去を知ったみたいで見ている方が混乱してしまいます。

正直、この作品を佐々部監督には撮って欲しくなかった。この監督はこの素晴らしい原作「夕凪の街 桜の国」を映画で良作にすることは出来たが傑作にする技量がなかったですね。「出口のない海」もそうでしたが、戦争映画というのはそのメッセージを明確に伝えたいのであれば、良作じゃダメなんですよ。傑作じゃなきゃ。

この監督の作品を見るたびに原作や物語と真剣に向き合って演出や脚本書いているのかと疑問に思うことがしばしばです。