以前に、Apple Watch Ultraを購入した旨の記事を上げましたが、あれから山登りや普段の生活の中に取り入れ3ヶ月ほど使ってみました。その使用感をまとめてみたいと思います。
まず、結論から言うと、
「買って良かった。十分山登りに使える」です。
一言で言うなら「なかなか優秀なガイド」と言ったところでしょうか。後で詳しく述べていきますが、Apple Watch Ultraの機能を有効に使うことで、登山での安全を高めたり、各種サポートが充実したりします。
バッテリー持ちについて
スマートウォッチのバッテリー持ちに関しては大きな懸念点の内の一つでしたが、Apple Watch Ultraを使ってみると通常使用時で36時間とほぼ公称通りで、特に何かをしたから極端にバッテリー持ちが短くなる、と言ったようなことはありませんでした。
むしろ、ふだん使いでただ腕時計として付けているだけであれば、もっと持ちは良くなりますね。
Apple Watch UltraとノーマルのApple Watchとの最大かつ決定的な違いがこのバッテリー持ちの差だと言えます。Apple Watch 9で公称18時間のバッテリー持ちとUltraの半分になってしまうため、充電環境が制約される登山などの長時間のアウトドアアクティビティにおいては、このバッテリー持ちの差が使い勝手の大きな差になってしまうのです。
山行での使用に関して言うと、3日間の北アルプス長期縦走では途中で1回充電しましたが、それで問題なく使用できたため、バッテリー持ちに関してはまずまずの評価です。日帰り登山では朝に100%充電しておけば帰りまで余裕で持つと思います。
では、これから良かった点と改善して欲しい点を挙げていきます。
良かった点
スマホ取り出し回数が激減
登山中におけるスマホの格納場所って結構悩ましいですよね。私はザックのチェストポーチに入れていますが、時間や地図を確認する度に取り出すのは結構面倒くさい。
一番のリスクは登山道上でスマホを落としてしまうことです。私は合戦尾根で落として画面をたたき割ったことありますし、友人は表銀座の岩稜帯で奈落の底にスマホ落として取り返しのつかないことになりました。もはやスマホ無しの登山は致命的な人も多いのではないでしょうか。
ここでApple Watch Ultraがあれば時間や地図の確認も安全で楽ちんです。スマホを落としたり、バッテリー切れのリスクにもある程度対応できます。YAMAPなどをコンプリケーションに登録しておけば、Apple Watch上に一発呼び出しできます。
万歩計になる
不思議なことに、Apple Watchはなぜか単独で万歩計の機能がありません。歩数自体はフィットネスアプリのパラメーターとしてはあるのですが、コンプリケーションとしてリアルタイムに表示できないので不便なんですよね。
でも、こういうときこそ外部のアプリを入れれば解決します。私が愛用しているのは以下のアプリです。
これの何がいいかというと、無料なのとコンプリケーションとして配置できるので、Apple Watchの画面に常に歩数が表示可能なところ。目標歩数を達成するとお知らせしてくれるのも便利。
確かYAMAPのアプリでも歩数計測できたと思いますが、山行時のみの歩数なので移動も含めた歩数計測などしたい場合はよいですよ。もちろん、ふだん使いにも。
GPSの精度が高い
GPSがとても正確で信頼性高いです。
Apple Watch Ultraは高精度二周波GPSとやらで精度を上げているようですが、普段のランニングやウォーキングで通ったコース情報が非常に精密かつ正確に記録され、iPhone側のフィットネスアプリから地図上にマッピングされた状態で参照できます。
以前使っていたスマートウォッチでは時々GPS記録が飛んだり不正確な記録だったりと、GPSロガーとしてはかなり使えない感じだったのですが、Apple Watch Ultraでは今のところそのようなことはありませんね。
山でもApple Watch内蔵の高度計と合わせてコンパス代わりに使うと、紙の地図上でも位置特定が簡単にできますので、とても便利です。登山者御用達の「山と高原地図」には緯度と経度が書いてあるので、磁北線とか気にせず初心者も簡単にApple WatchのGPS情報から現在位置を知ることが出来ますよ。
登山中の心拍数を把握することでペース管理が出来る
Apple Watch Ultraで登山中の心拍数管理をしています。
これで何ができるのかというと、適切なペース配分です。
ソロ登山だと、登り初めを飛ばしすぎたりして後半バテバテになったり、全体的にペースが速くなりがちになって疲労が余計にたまってしまい、休憩を多く取らざるを得ないような状況になってしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。
そこで、心拍数トレーニングの応用で、現在の運動強度を心拍数から逆算することで、オーバーペースになっているかどうか判断するのです。
どのくらいの心拍数を目安にするかは、年齢や持久力などいろいろな要素が絡んでくるので試しながら調整になるのですが、おおよそ年齢によって目安があるので、以下のサイトを参考に調整してみてください。
山にもよりますが、私の場合はだいたい登山中の心拍数の上限を145bpm前後に設定しておいて、それを超えるようならペースダウンしています。そうするとあら不思議、疲労感の少ない登山が出来るというわけです。
日々のトレーニングの管理と最大酸素摂取量の推定ができる
心拍数の計測が登山中に有効だということは、上記に記した通りです。
ところで皆さん、登山に向けた体力作りを普段からされてますよね?
最近、登山の遭難ニュースなどでは、疲労で動けなくなったとか、下山中にバランスを崩して転倒滑落とか、およそ体力や筋力の不足から来る遭難事例が増えているように思います。100%の力を使い果たすような登山もこの予備軍ですよ。
そこで、そのようなことにならないようApple Watch + iPhoneで、トレーニングの成果を見える化することで、自身の体力や心肺機能などを常にモニタリングし、体力作りの指標やモチベーションにすべきです。
Apple Watchにて日々のランニングやウォーキングで収集されるデータから、iPhoneのヘルスケアアプリで最大酸素摂取量(Vo2MAX)を推定できるので、そこから自己の心肺機能がどの程度あるのか数値化された状態で確認できます。年齢によって平均以上/以下などの閾値が変わるので、低い場合はトレーニングで鍛えなければいけません。
科学的な指標からトレーニングの負荷を決定すれば、効率的な体力作りが可能になります。もちろん、現在の体力の指標にもなるので、体力不足に起因する遭難や事故を予防することがある程度可能になります。
電子マネーが使える
山小屋で電子マネーを使うのはまだ厳しいですが、行き帰りの公共交通機関運賃支払いや登山前後のコンビニや食事代金の支払いなどで、Apple Watch Ultraのウォレットに登録している電子マネーを便利に使っています。
ザックやポーチにしまっている財布やスマホを取り出さなくてよいのは本当に便利!
緊急時のSOS機能が充実
さすがにまだ使ったことはありませんが、Apple Watch Ultraは緊急時の機能が充実しています。例えば緊急連絡先への連絡をボタン長押しで出来たり、86デシベルの緊急サイレンを鳴らして居場所を周囲に知らせたりすることも可能です。
あと、スマホが使えなくなった場合の連絡・通信や現在地把握の代替手段としても使用可能です。実はこれでスマホのバッテリーが無くなった際に一回助けられています。重要な機能を二重化しておくことで緊急時にも対処可能になりますね。
なので、登山で使うならスマホと合わせてApple Watch Ultraも通信サービスに加入して、iPhoneなしの単独でも通信可能にしておくことを強くお勧めします。ahamoなら+550円/月(税込)で加入できます。
他にも良い点は色々ありますが、個人的にはこんな感じでしょうか。
改善して欲しい点
バッテリーの持ち
省電力モードだと60時間(Ultra2だと72時間)使えるようになりますが、省電力モードは使える機能が制限されるのでなるべく避けたいのですよね。通常使用で最低3日間は無充電で使えるようにして欲しいです。
最低動作温度
Apple Watch Ultraの最低動作温度が-20℃なのですが、早朝の冬山だとたまにこれを下回るので、-30℃くらいにしてもらえると安心して厳冬期の八ヶ岳に行けるんですけどね。
アクションボタン
一発でワークアウトを呼び出せるのは良いのですが、呼び出せる機能が少なすぎてまだ便利とは言い難いですかね。できれば、アプリケーションなど呼び出せるようにして欲しいのですが。
また、アクションボタンが大きく押しやすい位置にあるので、意図せず押してしまっていつの間にかワークアウトが始まっていたりすることがよくあります。慣れの問題なのかも知れないですが、誤操作が多くなりがちなのでボタンの位置や硬さなどを改善して欲しいです。
初めはデカくて重くて使いにくいかなと思っていましたが、使っているうちに慣れてきたのか、なんとも感じなくなってきました。むしろ、その存在感が所有欲を満たすので良いのではないかと。
Watch OSとApple Watch Ultraが今後どのように進化を遂げていくのか楽しみです。