直木賞作家東野圭吾の原作「手紙」を映画化した本作。正直、この原作どころか東野圭吾の小説すら読んだことのない人の映画観賞後の感想なので、そのあたり理解の上この後をお読みくださいませ。
この映画は強盗殺人を犯してしまい服役中の兄[玉山鉄二]がいるために社会的偏見(この映画では「差別」という表現を使っていたが、個人的にしっくり来ない表現だと感じたのでここでは「偏見」という表現を使わせてもらいます)を受けることになってしまう弟[山田孝之]の苦悩を描いた社会派のドラマ。
想像以上に重い内容で、見終わった後に考えてしまう作品だ。この映画の弟の立場だったら、もしくは兄の立場だったら自分は周囲に対してどう振る舞うのだろうと考えても答えなんかすぐには出てこないだろう。
弟が周囲から受ける偏見は悲しく不条理だけれども、一方で加害者一家の現実はこうなんだろうなととてもよく理解できてしまう。就職、結婚など人生の節目で突如現れグチャグチャにしていくその偏見はまるで悪魔のよう。
この映画のストーリーで唯一の救いは、この救われない兄弟に手をさしのべる由美子[沢尻エリカ]の存在だろう。執拗にこの兄弟にちょっかいを出す由美子はちょっと不自然に感じるところもあるが、由美子の背負っている立場がそうさせているのだと考えれば納得がいく。それにしてもこの沢尻エリカ、奥さん役がここまで板に付くとは想像しなかったなぁ。
兄の贖罪と唯一の肉親である弟への愛、しかしそれを受けられない弟の状況と兄との関係の断ち切り。人間は時には強く、そして時には弱い生き物なのだと言うことを痛感した。人と人、人と社会、その繋がりは強くそして脆いモノなんだと。
内容は重いですが非常に良質なドラマです。役者の演技も芸達者ばかりで安心して見れます。特に最後の玉山鉄二の演技には心揺さぶられました。是非、劇場で見てください。オ ススメです。