2015年のGW初めの週末は名古屋港で行われた潜水艦救難母艦「ちよだ」の艦艇公開に行ってきました。
兵装である単装砲・速射砲やVLS(ミサイル発射装置)を積んだ護衛艦の艦艇見学も面白いですが、「ちよだ」のように兵装は積んでいないながらも特殊な任務を遂行するために作られた艦艇は見学していても驚きと発見の連続で非常に面白いですよ。
そもそも、潜水艦救難母艦とはなんぞや?という話ですが、読んで字のごとく「海底で事故などで動けなくなった潜水艦の乗員救助」のミッションを遂行する役割を持っています。あと、いわゆる潜水母艦の役割、つまり潜水艦への補給任務や潜水艦員の休養施設などを持っています。
以上の基本事項を踏まえた上で、以下の見学レポをご覧ください。
潜水艦救難母艦「ちよだ」の正面から撮影。日曜日の公開時は満艦飾でお出迎えでした。
4/26は自衛隊の日で各地で艦艇が満艦飾していたそうですよ。
艦艇公開当日は非常に多くの見学者が訪れていました。なので、時間短縮のため見学コースが二つに分かれており、DSRVとヘリ甲板見学が出来るコースと、艦内にある減圧室を見学できるコースの2種類ありました。
まずは、艦内にある減圧室見学コースから。
艦橋から非常に狭いハッチと階段を下りた先の廊下部分。この先に減圧室があります。
これが減圧室の外殻。カプセル状になっていてこの中に人員が居住できるスペースがあります。
減圧室の中のスペース。まるで宇宙船の中ですね。海底300mの高い水圧の中で潜水を行った人は、この減圧室の中でおよそ20日間滞在し徐々に減圧された環境=地上の気圧に慣らしていくそうです。人の体は加圧には比較的すぐに順応できるが、減圧に対しては慣れるのに時間が掛かるらしく、急激に減圧すると潜水病になってしまうとか。
ちなみになんでこんな施設があるのかというと、一つは潜水艦事故で潜水艦乗務員が高圧の環境(浸水等で艦内に高圧環境が作られる)に晒されたときの減圧治療用、もう一つは潜水士が深い深度で潜水したときの減圧環境として用意されているようです。潜水艦救難も人手で行う部分があるのだそうです。
このように外部からモニタで減圧室内の様子の確認と、連絡ができるようになっていました。
これがPTCと呼ばれる人員輸送カプセルで、潜水時にこのカプセルで潜水士が加圧された状態で深海まで下りていき、海上に上がるときはこのカプセルから減圧室へ直行して気圧の変化を受けないようにするとのこと。かなり規模の大きい設備になりますね。
さて、次はお待ちかねのDSRV見学です。
写真の奥に見える白い潜水艇がDSRV(深海救難艇)です。まさにこれこそが「ちよだ」のメインの装備と言っても良いのではないでしょうか。
前の写真の裏側から。DSRVは全長12.4mで一回につき12名まで救助可能。
DSRVの救難オペレーション概要図。「ちよだ」から発進したDSRVが潜水艦の場所まで潜行し、潜水艦のハッチに直づけして搭乗員を救助、その後また浮上して「ちよだ」に回収されます。
一応任務としては日本の潜水艦だけでなく西欧各国の潜水艦も対象にしているとのこと。
格納庫からDSRV正面を撮影。さすがに皆さんこのDSRVには興味津々の様子で、自衛官の方にいろいろ話を聞かれていました。私もいろいろ伺いましたが、潜水艦救難という非常に特殊で難易度の高いオペレーションに真摯に対応されている様子が窺えました。
1985年に就役した「ちよだ」はその艦齢からあと数年で退役すると言われおり、同じ目的で作られる新造艦にバトンタッチすることが決まっています。それまでに是非一度見学したいと思っていましたが、今回その願いが叶えられて良かったです。