見てきました。
これで2016年公開の三大アニメ映画(「君の名は。」「聲の形」「この世界の片隅に」)を制覇したどー!
それはさておき、こうの史代の漫画はかの名作「夕凪の街 桜の国」は持っていて、そういえば実写化された映画も見た記憶ありです。
あ、あったあった。映画に関しては9年前の過去記事にありました。
こちらは広島に投下された原爆にまつわる話で映画に関してはイマイチでしたが、今回見た映画「この世界の片隅に」は戦争に翻弄された市井の人を描く作品としては間違いなく傑作だと思います。
ある意味、こうの史代の漫画は絵柄がすでに卑怯というか、「この世界の片隅に」のストーリーにとても良く調和していて、アニメ映画にもそのテイストは受け継がれあの独特な「ほわーん」とした作品の雰囲気を作っていますね。
で、手短に感想を書くと「雰囲気はほんわかだが、内容は圧倒的な狂気」とでも書いておきます。
正直、見終わったときは恐怖すら感じました。
淡々と物事を描いているからこそのそこに秘められた強烈な狂気。
細部のディテールに込められた圧倒的な説得力。
これらが渾然一体となってひしひしと押し迫ってくるのは尋常では無い恐怖です。もう、戦争反対とかそういう言葉さえ軽い言葉と化してしまうような強烈な体験を映画から受けるなんて思いもしませんでした。
これと同じ体験をしたのは沖縄の「ひめゆりの塔資料館」を見学した時以来です。
ひめゆりの塔資料館には、亡くなったひめゆり部隊の女子生徒の写真に名前と亡くなった時の状況が簡潔に書かれて掲示されているのですが、あまりに淡々と死の状況が書かれているので、読んでいるうちに「人間ってこんなにあっけなく死んでしまうんだ」と猛烈な恐怖と絶望に襲われたことを思い出しました。
もちろんその淡々とした記述の裏に潜んでいるのは沖縄戦の尋常で無い狂気です。
同様に「この世界の片隅に」は余計な脚色も無く、ただ淡々とありのままを見せる事で強烈に心を揺さぶる何かをこの映画は伝えていると感じました。
そして、能年玲奈のほのぼのとした演技と絵柄から受けるほんわかとした雰囲気に騙されてはいけないです。そこに隠されているのは圧倒的な狂気なのです。